人事評価制度を導入したら、優秀な社員が疲弊してしまった話|note記事を更新しました

※こちらの記事はnoteから引用しています。


先日、知人のAさんから「よこたさんの会社って、人事評価制度ありますか?」と聞かれました。

「実は、人事評価に振り回されていて…もう、パンクしそうなんです。」

聞くと、10か月前に組織改編と同時に導入された人事評価制度の運用を任されて、Aさんの業務量が純増。
評価項目を考えたり面談のフィードバックをしたりするのに、かなりの残業が発生していると言うのです。

導入した評価システムは有名なもので、ツール自体に問題はなさそう。

私は、最近読んだ「小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」を思い出し、経営計画やビジョン連動しないまま制度の導入を急いでしまったことが原因ではないかと感じました。

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この記事では、書評を交えながら「なぜ人事評価制度を導入したら優秀な社員が疲弊してしまったのか」を考察してみました。

Contents

人事評価制度がなくても回っている会社はある

私が勤める従業員20名の中小製造業では、等級制度も人事面談もありません。50年以上、昇給や賞与は社長・副社長の判断で決まってきました。

それでも5年以上離職はゼロ。社員からも、そこまで大きな不満の声は上がっていません。
これくらいの規模の中小企業ってそんなもんなのかな、と思います。

Aさんの会社(従業員20名未満)も、制度を導入するまでは社長の鶴の一声で評価が決まっていたそうです。

ところが、社長が評価制度に関する書籍を読んで「評価制度を導入すれば会社が成長する」と早合点し、すぐに評価システムの契約をしてしまいました。

準備のないまま制度だけ導入したことで、現場に負担が集中してしまったのです。

ビジョンがないまま制度が先走ってしまった

人事評価システムの導入を決めて、すぐに契約してしまったAさんの会社。
システム利用開始までの準備期間は3か月しかありませんでした。

その間にゼロから評価制度を設計するのは、プロでも至難の業です。

前出の「小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」では、3つのステップで評価制度を作成する方法が紹介されています。

■STEP1
「ビジョン実現シート」を作成する

■STEP2
「評価制度」をつくる

■STEP3
「ビジョン実現型人事評価制度」を運用する

最初に行うのは、経営理念や行動指針、10年後に目指す人材像などを1枚のシートにまとめることです。

ビジョン実現のためにどのような人材を育成したいのかというゴールと、それを達成するためのプロセスを全社員で共有し、人事評価制度に落とし込んでいくものです。

評価制度は、単に賃金を決める基準ではありません。会社の理念・目標・考え方に合った社員を育て、採用するためのしくみです。

本書では、「経営理念のつくり方」から「理想の人材像の考え方」まで、詳しく説明されていました。

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全社員が同じビジョンを共有することが重要

Aさんの会社ではそもそも何のために評価制度を作るのか、会社はどこに向かっていくのかという目的が共有されていませんでした。

これでは、評価する側も評価される側も、何を目指して行動すれば良いのかわからなくなってしまいます。

組織改変と評価制度の運用が同時に始まった

Aさんの会社では昨年、2つの事業所を再編。社員から取締役が新たに任命され、Aさんも昇格しました。

いきなり部下が増えたAさんは、異なる組織文化を束ねる立場になり、新体制に慣れるだけでも大変な状況でした。

そのタイミングで、人事評価制度の運用が始まってしまったのです。

本来、評価制度の設計は組織設計と切り離せません。

まずは現状の業務を整理し、社員から「自分の担当業務の内容と課題」や「本当はやるべきだけど、取り組めていない仕事」などを聞き出します。

そのうえで、会社のビジョン実現に向けて「リーダーに求める行動」「一般社員に求める行動」を定義し、評価項目へ落とし込みます。

場合によっては、組織体制そのものを見直す必要もあります。

考えるべきなのは、「誰が誰を評価するか」だけではありません。

  • どんな役割が必要なのか。
  • どんな人材を育てたいのか。
  • どんな体制で目標を達成するのか。

社員一人ひとりが自分の役割を理解できる組織図を描いて、はじめて評価制度は機能します。

しかし、Aさんの会社では、組織改編と制度運用が同時進行でした。土台が固まらないまま、評価だけが走り出してしまったのです。

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ビジョンを意識した組織であれば「進むべき方向性」が明確になる

評価項目を現場任せにしてしまった

Aさんに与えられた任務は、部下8名分の評価項目を考えて、それに沿って評価することでした。
従業員20名弱の会社で、重い負担がのしかかっています。

会社としてのビジョンも不明確。各従業員に求められる役割も定まっていない。そんな状態で、「現場のことは現場に近い人間がいちばんわかるから」という理由で項目の中身を丸投げされてしまったAさん。

これまで評価項目なんて作った経験はありません。日々の業務に追われながら一生懸命取り組みますが、完全にキャパオーバーです。

さらに、これまで存在しなかった評価面談やフィードバックも加わり、「評価のための残業時間」が増えて疲弊してしまいました。

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評価項目の内容だけ任され、キャパオーバーとなってしまった

本来、評価項目は場当たり的に作れるものではありません。

等級や役職ごとに求める役割や能力を定義し、部署ごとに評価軸や比重を設計する必要があります。

その全体設計は、経営陣の責任です。

方向性を示さないまま項目作成だけを任せても、望む人材育成にはつながらないでしょう。

人事コンサルの必要性を実感する

評価制度は、作成にも運用にも定着にも、時間がかかります。
本書では、運用開始までに3年かかった事例も紹介されていました。

社員の反発を防ぐ社員説明会や、トライアル評価期間の設定など、丁寧なプロセスも欠かせません。

でも、初めて評価制度を導入する会社はここまで想定できないでしょう。
だからこそ、外部の視点に意味があると思うのです。

ビジョンの整理から評価項目の設計、運用ステップの管理まで。

客観性を保ちながら、順序立てて進める伴走者がいることで、制度は形だけで終わらずに済みます。

Aさんの話を聞き、制度は専門性とプロジェクト管理の両方が求められる領域だと強く感じました。

評価制度は単なるツールではなく、経営の土台づくりとなる。そのプロセスを支える存在の重要性を、改めて認識しています。

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外部の視点があってこそ、望ましい評価制度ができるのかもしれない

まとめ

評価制度は、ビジョン、組織図、役割定義、等級設計…といったすべてが連動して初めて機能するものです。

その設計図がないまま制度だけを動かすと、責任感のある人ほど背負い込み、疲弊してしまいます。Aさんのケースは、決して特別ではありません。

だからこそ、評価制度を単なる「システムの導入」ではなく、「会社の将来像の設計」として扱うべきだと感じました。

私自身も、評価制度を会社の未来につなげるための、伴走ができる存在でありたいと思います。


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